回らない高級寿司店で特上のものを食べてみよう!
私は『死ぬまでにやることリスト』をNotionで管理している。
- 日本一周する!
- 体脂肪率を一桁にする!
- 結婚する!
とかまあ大層なことを並べているリストなのだが、その中に
『回らない高級寿司店で特上のものを食べる!』
というものがあった。
かなり昔に書いた項目なので、このリストを作成しはじめた大学生くらいの時の夢だったのだと思う。
牛丼チェーン店が最高の贅沢だった貧乏大学生の私にとって、最高級の寿司を食べてみたいという願望は、まさに死ぬまでにやりたいことの一つだった。
『鮨 花おか』行ったみた
ということで渋谷にある高級寿司屋 『鮨 花おか』に行ってみた。
鮨 花おか とは

渋谷桜丘町、鮨と肴を愉しむ大人の隠れ家鮨屋。
素材本来の味わいだけでなく、まだ出会ったことのない魚の旨さを体験していただくために。
伝統にとらわれない珍しい素材や多彩な調理法を取り入れ、可能性を追求し続ける「鮨 花おか」
訪れるたび、新たな美味しい発見があなたをお待ちしています。
(公式サイト)
サクラステージを抜けた静かな路地の一角にある高級寿司屋。
他の高級なお寿司屋さんに行ったことはないが、銀座や麻布十番などの寿司屋でも10000円代程度が相場であることを考えると、特選コースが16500円の本店は紛れもなく”高級寿司屋” の一つであろう。
ちなみにきっかけは “ふるさと納税“。東京都渋谷区の返礼品として、こちらの食事券が用意されていたためだ。
通常16500円の特選コースだが、これが9000円引きで楽しめるということでありがたい。
メニューとしては上記の特選コースのみとなっており、そのコースが進む中でドリンクを適宜注文できるという仕組みだ。
普段はお酒を飲まない私だが、せっかくということでスパークリング日本酒を注文してみた。

全9席の洗練された店内。
(如何にも高級な寿司屋だ…!)とやや緊張しながらコースがスタート。
美味かった寿司’s
『花おか』さんで提供されるお寿司は日によって異なる。
これはある程度高級な寿司屋だとあるあるらしくて、その日の仕入れや旬の時期などによってコース内容が変わるとのこと。
特に『花おか』さんでは「まだ知られていない魚の旨さをもっと知ってもらいたい」というコンセプトで、希少な魚種が盛りだくさんとなっていた。
一部特に印象に残ったネタを紹介してみる。

まずはこちら『エイの肝』。
刺し身や天ぷらなどの前菜的なメニューの後、握りのフェーズに入って1巻目のネタ。手渡しされるスタイル。
エイて!しかも肝て!
普通に過ごしていたらまあ食べることのないネタに、恐る恐る口に運んだが……
美味い!!!!!!!!!!!!
トロットロの肝がめちゃくちゃクリーミーで、赤シャリと混ざりあって口いっぱいに旨味が広がる。
握り一発目でこれか!というのもあってめちゃくちゃ印象に残ってる。普通に注文するタイプの寿司屋だったらこれだけを200巻くらい擦ってたと思う。

続いて『チーム北海道 海鮮丼』
北海道産のズワイガニ、バフンウニ、イクラの3つが織りなすミニ海鮮丼。
各ネタのクオリティも然ることながら『よく混ぜてお召し上がりください』という大将の案内通り食べてみると、それらが互いの存在を活かしあいながら抜群のハーモニーを奏でる。
ウニそんなに好きじゃない妻もこちらは絶賛。
よく「ここの〇〇は苦手な人でも大丈夫だから」みたいな言い方でメニューを推してくる人がいるが、信じてもらえるとしたら「ここのウニは苦手な人でも大丈夫」だ。

こちらは『アカゼムロアジ』。聞いたことないよ。
なかなか採れない魚で市場には滅多に出回らないことから「幻の魚」とすら呼ばれている(本当か?)珍しい魚種らしい。
美味い!!!!!!!!!!!!
脂乗りがよくて味がしっかりしているので、味覚の繊細さに自信の無い私でもわかりやすく美味しかった。

『中トロ』。
結局トロが美味い。結局ね。
比べるのも変な話だが、やはり回転寿司の中トロとは何もかも別物だった。
陳腐な言い回しだが「口の中で溶ける」といった具合で、ネタが舌の温度で溶けてしまってるんじゃないかと思うくらいしっとりとろける美味しさ。
これだったら無限に食えるんじゃないかなと本気で思った。
美味しかった!……はずなのに
先に言っておくが、上記の通り『花おか』さんの提供するネタの数々、品質、ホスピタリティ、どれも星5という感じで非の打ち所は無かった。
良い経験になったし良い時間を過ごすことが出来たと思う。
だが『死ぬ前にこれを食べたいか』でいうと、率直なところ違うなと思った。
リストに記載していたこともあって、そのくらいの期待をしていってしまったのが良くなかった。
当たり前のことに気がついた
当たり前に考えて3000円の回転寿司の5倍美味いわけは無い。お金をかけた分美味しくなるというそんな単純な話ではないのだ。
『回らない高級寿司店で特上のものを食べる!』という目標が達成できて嬉しいのはもちろんだが、高価な食事というのはそれだけでは喜びの上限値がすぐ頭打ちになるということがわかった。
ちなみにリストには横並びで『フランス料理の高級コースを食べる』という項目もあったが、これはこの機に削除した。20代の私、食欲がすごいな。
この文を書きながら自分でも整理しているところだが、つまるところ今回の項目は『死ぬまでにやりたいこと』というよりは『生きているうちにどこかで出来たら良いこと』だったのだと思う。
だから達成した喜びが他の項目より弱いし、”こなした” 感じが否めない。
では死ぬ前に食べたくなるようなものって何なのだろうと思考を巡らせてみると、
- 実家で母が作った鶏の唐揚げ(大好物)
- 妻と食べた焼肉(仲良くなったきっかけ)
- 友達と馬鹿話した後に帰り食べたラーメン
- 日本一周中でご馳走してもらった海鮮丼
という感じでストーリーが乗っかってるものばかりだということに気づいた。
これらは全部『明日死ぬ』となったら絶対食べたいものたちだ。
そこには、単に高級なだけでは入ってこないのかもしれない。
高いお金を払って高級な物を食べる。これ自体は良い経験になったし、自分の物差しが大きくなった気がするので、やってよかったと思う。
だが、最高の食事というのは意外と何気ない日々に転がっていたりして、それをちゃんと認識できているかということの方が重要なのかもしれない。
